自然が語りかけるもの
西洋ににもまた、自然界の響きと交流する能力を有した作曲家たちがおりました。ベートーヴェンが交響曲第6番《田園》を作曲した際のエピソードは有名ですが、20世紀フランスにはオリヴィエ・メシアンという大作曲家が出ました。
彼の業績の中でも有名かつ特筆すべきは、世界各地の小鳥たちの声を採譜し、それにもとづいた作曲を行ったことです。現代音楽の理論にもとづいた前衛的作風ながら、小鳥たちのさえずりに彩られたその音楽は、カトリックだった彼の宗教性を反映しながら、自然界の響きが木霊し、幻想とモダニズムが共存する独特な魅力を有していますが、それはロマン主義的過剰さと論理実証主義的厳格さとを、包括しながら超越する、静寂の世界だったのです。
メシアンが日本を訪れた際、或る場所で彼のピアノ演奏を披露する機会があった。彼が弾き始めてしばらくすると、その音に共鳴した小鳥たちが窓際に降りてきた、という伝説すら残っています。
軽井沢を訪れたメシアンは、日本の小鳥たちの声に熱心に耳を傾けていました。彼は「音楽がもたらす平和」を信じていたようですが、ここでの「音楽」とは狭義のクラシック音楽や現代音楽のことのみを指すとは私は思いません。またインド音楽や雅楽をも研究した彼は、カトリックの作曲家といっても、狭い了見の持ち主ではなかったはず。
こんにち、都会の喧騒や森林の伐採などに踏みにじられ、埋もれてしまいがちな自然の「法」ですが、それはひとたび静寂の中に佇めば、ふたたび私たちの心の中に浮かび上がってくるものではないでしょうか。
私たちは、そこから真の智恵と慈悲を湧き出させることができるのではないかと思います。
何教と何音楽とを問わず、自然の静寂に耳を傾けることの大切さに、改めて思いを致させられた次第です。
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